はじめの一歩 Round 1069 『粉砕』

はじめの一歩 Round 1069 『粉砕』の感想(ネタバレ)

大歓声の後楽園ホール。一歩の最後の突撃への、ホームでの突貫を目の当たりにし、観客のボルテージは最高潮。そこにいる全員が一歩の勝利を確信している中、鴨川会長は一人その不安を隠せずに呆然としている。伸ばした手は一歩の突進を止めるように差し出すが、そこはリングの外。その伸ばした手は宙に漂い、周囲から聞こえる幕之内コールにかき消されて、小さく映る。

いや、この表情だけで大方予想はつきました。単行本を読み返すと、ここそこで伏線が張られていたので、その回収に使った試合でもあるんでしょうね。


リング上ではまさに決着の時。一歩のショートフックがゴンザレスの顔面をとらえる瞬間。鴨川会長の手が一歩のモーションを止めるかのように宙を漕ぐが、観客のボルテージに呑まれていく。


一歩の繰り出した拳は、
  鴨川会長の止める手は
 ゴンザレスに捉えられ
   一歩の背には届かず
  その突進力が
    会長の哀願が
   ただ壁にぶつかるように

ゴンザレスの突き出した拳に、静かに静かに吸い込まれていった。


ここはアニメにするときは無音にしてほしいところですね。どんな言葉を尽くしても演出に呑まれます。


一歩の突進を吸い込んだ拳は、ただただ静かに振りぬかれ一歩の意識を確実に刈り取る。そして一歩の体は、振りぬかれた拳が元の位置に戻っていく瞬間を待たずに、前へ静かに沈み込んでいくのであった。ロープ際、直進し突進した日本が誇るボクサーは、そこに深く沈没していった。


なんかもう、演出がすごすぎて感想がおっつきません。ジョーみたいに暗さを感じないので死ということはないでしょうけど、こういう絶望のシーンをK田戦で見たかったですね。もちろんあの3兄弟が負けるパターンで。


再び静寂が襲う後楽園ホール。一歩の勝利を確信するものは誰もいない。
再び会場を絶望が襲う。その静寂の中、誰よりも早くリングに乗り込もうとする影。
ゴンザレスをニュートラルコーナーに下げるレフェリー。カウントを取ろうとする前に、レフェリーにぶつかるその影は、間違いなく鴨川会長その人であった。


そういえば丹下段平がこういう反則していましたね。


セコンドがリングに飛び込むこと、それは選手の危険を感じたときでもあるが、それはその選手の敗北をも意味する。その師弟の姿にレフェリーは手を交叉。試合終了の合図だ。
幕之内一歩、世界二位への挑戦はここに潰えた。
会場には勝利を喜ぶゴンザレス陣営の歓声と、観客席の絶望の溜息、実況席の無責任なアナウンス、それに鴨川会長の悲痛の叫び声だけが残った。


今回セリフ少なく、名(迷)シーンが選びづらいために、元のスタイルへ変更。いい演出が多かったですね。

それでは、また。